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災害時職員行動指針(地震版)

更新日:2024.06.18

在宅医療専門クリニックのコンサルティング業務において有料で作成した「災害時職員行動指針」の「地震」版を掲載します。

(災害時職員行動指針)

本指針は、患者の安全を守るにはまず職員の安全を守ることということを第一としながら、BCP(業務継続計画)策定の考え方を基礎にして、災害が起こった時に初動活動を迅速かつ効率的に行い、被害を最小限に抑えるための指針である。ただし、災害の種類によりクリニックが所在する市区町村地域防災計画に定める医療救護活動が優先される場合がある。

1、 地震

地震について、震度が一つの評価ではあるが、訪問診療に関しては被害状況により対応が変わるため、柔軟な対応が必要である。

参考:https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/shindo/kaisetsu.html

(1)震度1~震度4

震度4では、歩いている人のほとんどが揺れを感じ、眠っている人のほとんどが目を覚ますレベルである。電灯などの吊り下げ物は大きく揺れ、棚にある食器類は音を立て、座りの悪い置物は倒れることがあり、電線が大きく揺れる状況である。(上記気象庁震度階級関連解説表)

建物や道路に被害が出るレベルではないが、場合によっては、公共交通機関に遅れや高速道路の規制などの影響が出たり、津波の発生も予想されるので、気象庁の情報にも注意が必要である(津波の情報は、地震発生後約3分を目標に警報、注意報を気象庁より発表することになっている)。

(行動指針)

震度1~4の地震が発生した場合、クリニックの診療業務に大きな影響が出る可能性は低いが、特に震度3以上(震度4以上の地震では、各地域の事業者の判断により、鉄道、高速道路等で、安全確認のため、運転見合わせ、速度規制、通行規制が行われる)では、下記の行動を実施する。

・職員の安否確認、出勤予定者の出勤確認

⇒出勤に遅れが出そうな場合、訪問診療従事の職員は訪問先へ直行も検討。

・在宅患者の安否確認

⇒特に在宅酸素等、重症度の高い患者から優先的に実施する。

・出勤した職員によるクリニック内、クリニック周辺の被害状況の確認

⇒停電、断水、棚等が倒れていないか、機器類の破損はないか等を確認する。また、念のため、ガスの元栓を閉め、停電、断水の場合は電気のブレーカーを落とし、水道の元栓を閉めて様子を見る。

※災害に備えて、日頃から電子カルテやPC等データのバックアップを怠らないようにして、いつでも持ち出せるようにしておく。

・余震に備える

⇒地震発生後、余震がおこる可能性があるので注意を怠らない。

・津波の情報に注意を払う。

⇒海に近い場合は特に、注意報、警報が出ていないか確認。

(2)震度5

⇒震度5弱では、大半の人が恐怖を覚え、物につかまりたいと感じ、震度5強では、大半の人が物につかまらないと歩くことが難しいレベルである。この震度階級から電灯などの吊り下げ物は大きく揺れ、棚にある食器類、書棚の本が落ちることが多く、窓ガラスが割れて落ちることもある状況である。(上記気象庁震度階級関連解説表)

また、この震度階級から木造の建物や道路に被害が出たり、公共交通機関や高速道路に影響が出る。

ライフラインでは、震度5弱で安全装置のあるガスメーターは遮断装置が作動し、ガスの供給が停止し、断水、停電が発生することがある。そして地震管制装置付きのエレベーターも震度5弱程度以上の揺れで安全のため自動停止する。

通信環境では、電話やインターネットが繋がりにくくなることも多くなる。更に、地震の規模、震源の位置、深さによっては津波の注意報、警報が出る可能性が高くなる。

(行動指針)

震度5の地震が発生した場合、クリニックの診療業務に大きな影響が出る可能性がある。特に高速道路の速度規制、通行止め、公共交通機関の運転見合わせ、停電、断水等が発生する可能性が高いので、下記の行動を実施する。

・基本行動は、震度1~4の地震と同じ

・職員、患者に被害が発生していた場合は支援を検討する。

・通勤距離が一番短く、クリニックに通勤できた職員は、院内の被害状況を確認し、医療機器等が破損している場合は、代替機器、修理等の手配を業者に連絡する。電話・通信が繋がりにくい場合もあるので、日頃からスマホのLINESNSを活用できるようにしておく。また、ラジオ等での情報収集も実施する。

⇒災害に職員の居住地や訪問患者宅を地図にマッピングしておく。

・地震の状況により院長が出勤できない可能性もあるので、代診のDRの手配、もしくは提携医療機関に訪問診療をお願いすることも想定する。

・患者のトリアージ・業務の一時中止(業務の縮小、一時中止)→院長判断

⇒被害の状況によっては、予定していた患者全員を訪問できない場合や診療業務が不可能な場合もある。重症度の高い患者を優先的に訪問する、もしくは一時診療業務を中止して提携医療機関、近隣で訪問診療が可能な医療機関に代診をお願いする場合も想定する。

・津波注意報、警報が出た場合は、訪問診療を見合わせ、情報に注意を払い、解除を待ってから訪問診療を実施する。

・移動手段の確保 

⇒訪問車両が破損した場合は、レンタカーの手配、道路に規制(通行止め等)がある場合で、近距離の訪問先なら自転車も活用。

・停電で電子カルテが使えない場合

⇒日頃からタブレットを活用できるようにしておく。また緊急では紙カルテを代用する。

・薬局との連携

⇒医薬品の調達、患者へのお届け等緊密に連携し、影響を最小にする。

・避難所等が設置された場合は、その情報を職員で共有し、患者に届ける事も検

討する。

(3)震度6以上

⇒震度6弱では、立っていることが困難になるレベルである。固定していない家具の大半が移動し、倒れることも多くなり、ドアも開かなくなることがある。

壁のタイルや窓ガラスが破損、落下することもある。更に震度6強では、補強されていないブロック塀のほとんどが崩れる状況である。(上記気象庁震度階級解説表)

また、この震度階級から木造の建物では壁などにひび割れや亀裂が発生することもあり、耐震性の低い建物が傾いたり、倒壊することもある。道路も大きな地割れが発生することもあり、高速道路も通行止めになったり、公共交通機関も運転中止になる可能性が高い。

ライフラインでは、震度5の場合に加え、更に電話、インターネットが繋がりにくくなり、その対策として、通信事業者により災害用伝言ダイヤルや災害用伝言板などの提供が行われる。

更に、震度5以上に、津波の注意報、警報が出る可能性が高くなる。

(行動指針) 

震度6以上の地震が発生した場合、クリニックの診療業務に重大な影響が出ることは確実である。建物の倒壊、高速道路の通行止め、公共交通機関の運転中止、停電、断水が発生し、一般道路にも亀裂等で通行止めになる所が多くなるので、まずは職員、患者の安全確保を最優先に下記の行動を実施する。

・基本行動は、震度1~4及び震度5と同じであるが、その行動ができない事が多くなる。

・津波、大津波警報に注意を払う。(場合によっては高台に避難)

・職員や患者の安否確認の際に、電話、通信が繋がらない場合は、災害伝言ダイヤル、災害伝言板が提供されるので、これらを活用する。

⇒日頃から使えるように準備しておく。

<一部訪問診療が可能な場合>

・患者の更なるトリアージ(診療業務を最小限)→院長判断

⇒必ず訪問の必要な患者のみに診療業務を絞る。

・職員、患者の居住地を考慮して、訪問診療を直行直帰にする。

⇒訪問診療が可能な場合

DRの訪問が無理な場合、看護師のみ訪問もしくは医薬品のみ届ける。(可能な場合)

<訪問診療不可能な場合>

・トリアージした患者宅が訪問診療可能で、クリニックが訪問診療不可能な場合は、診療業務を中止して、提携医療機関もしくは行政との連携により、訪問診療可能な医療機関に代診をお願いし、それも不可能であれば、訪問診療の一時延期を患者に伝え、クリニックの機能復旧に注力する。→院長判断

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