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災害時職員行動指針(風水害版)

更新日:2024.06.18

前回に引き続き、在宅医療専門クリニックのコンサルティング業務において有料で作成した「災害時職員行動指針」の「風水害」版を掲載します。

2、 風水害(台風等)

風水害について、特にクリニックの診療業務に大きな影響が出るのが、雨風を伴った台風である。風の強さは気象庁により「風力」という尺度で風速によって13段階に区分されているが、それは一つの目安で、実際に公共交通機関やライフラインに影響を及ぼすのは、気象庁より発表される注意報、警報等である。

また水害については、台風を伴わない場合でも、近年の異常気象により大雨、ゲリラ豪  雨等により、今後も各地に被害が出る可能性が高いので、大雨、高潮、洪水等の注意報、警報が出た場合の行動を想定しておく必要がある。

従って、それら注意報、警報を一つの評価として、それに応じて被害状況を確認しなが  ら行動していくことが必要である。

参考:https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/kaze.html

https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/warning_kind.html

   https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/warning.html

(1)風による影響

①強風注意報(看板等が倒れるレベルの風速)

強風により災害が発生するおそれがあると予想される時に発表される。気象庁の基準では風速15m/s前後である。

(行動指針)

強風注意報のレベルでは、クリニックの診療業務に大きな影響が出る可能性は低いが、看板等が倒れたり、飛来物が飛んできたり等、訪問診療に影響が出る可能性もあるので、下記の行動を実施する。

・高潮、波浪注意報に注意を払う。

・前倒しの訪問診療の検討

⇒事前に強風注意報の情報を察知し、当日の訪問診療に影響が出る可能性がある場合は前もっての訪問診療も検討する。

②暴風警報(竜巻、台風等)

暴風により重大な災害が発生するおそれがあると予想される時に発表される。気象庁の基準では風速25m/s以上の台風である。

(行動指針)

暴風警報のレベルでは、クリニックの診療業務に大きな影響が出る可能性が高くなる。特に高速道路の速度規制、通行止め、公共交通機関の運転見合わせ、停電、断水等が発生する可能性もある。地震と違って前もって備えや対策ができるので、下記の行動を実施する。

<台風通過前>

・基本行動は強風注意報と同じ

・診療材料・医薬品の備蓄

⇒台風の被害によっては、診療材料、医薬品の供給に支障が出る可能性があるので薬局とも連携して計画する。

・浸水、洪水への備え

⇒台風に付随して、高潮等による浸水、河川の氾濫による洪水の可能性もあるので備品、機器等高い位置に移動できるものは移動して少しでも被害を最小にする。

・道路の規制、訪問診療先の状況によっては一部訪問診療中止を検討する。→院長判断

・避難所設置の情報収集・確認

⇒避難所の設置情報を確認した時には職員で共有するとともに、患者への案内も検討する。

・高潮、波浪警報にも注意を払う。

・台風通過の状況によっては院長が出勤できない可能性もあるので、代診DRの手配、もしくは提携医療機関に訪問診療をお願いすることも想定する。

<台風通過中>

・台風が近づき通過する時期に、どうしても訪問診療が必要な場合は、状況を見て院長が判断する。その場合は患者のトリアージを実施し、前もって訪問診療に必要な備品を備え、訪問経路を確認して直行直帰とする。また、オンライン診療も検討する。

<台風通過後>

・クリニックの被害状況を確認し、浸水、停電、断水等が発生していないか確認する。停電で電子カルテが使えない可能性もあるので、タブレットも活用できるようにしておく。また緊急では紙カルテを代用する。

・職員・患者の安否確認

⇒電話・通信が繋がりにくい場合もあるので、日頃からスマホのLINESNSを活用できるようにしておく。また、職員、患者に被害が発生していた場合は支援を検討する。

・道路の冠水等の情報収集

・移動手段の確保 

⇒訪問車両が破損した場合は、レンタカーの手配、道路に規制(通行止め等)がある場合で、近距離の訪問先なら自転車も活用。

DRの訪問が無理な場合、看護師のみ訪問もしくは医薬品のみ届ける。(可能な場合)

・患者宅が訪問診療可能で、クリニックが訪問診療不可能な場合は、診療業務を中止して、提携医療機関もしくは行政との連携により、訪問診療可能な医療機関に代診をお願いし、それも不可能であれば、訪問診療の一時延期を患者に伝え、クリニックの機能復旧に注力する。→院長判断

③暴風特別警報(数十年に1度の強度の台風等)

数十年に一度の強度の台風と同程度の温帯低気圧により暴風が吹くと予想される時に発表される。

(行動指針)

暴風特別警報のレベルでは、クリニックの診療業務に重大な影響が出る可能性が非常に高くなる。訪問診療は中止して職員、患者の安全確保に努める必要があるため、下記の行動を実施する。

<台風通過前>

・基本行動は、強風注意報、暴風警報と同じ。

<台風通過中>

・基本行動は、暴風警報と同じ。

・高潮、波浪特別警報にも注意を払う。

<台風通過後>

・基本行動は、暴風警報と同じ。

・職員や患者の安否確認の際に、電話、通信が繋がらない場合は、災害伝言ダイヤル、災害伝言板が提供された場合はこれらを活用する。

 

(2) 雨による影響

①大雨、洪水、高潮、波浪注意報(交通の麻痺、冠水等が発生するおそれ)

大雨による土砂災害や浸水害及び洪水災害の発生、台風や低気圧等による異常な潮位上昇、高潮による遭難や沿岸施設の被害等の災害が発生するおそれを予想した時に発表される。

(行動指針)

大雨、洪水、高潮、波浪注意報のレベルでは、クリニックの診療業務に大きな影響が出る可能性は低いが、一部道路が冠水したり、海、河川に近い訪問診療先での通行規制等、訪問診療に影響が出る可能性もあるので、下記の行動を実施する。

・注意報に注意を払う。

・道路の冠水等の情報収集

・前倒しの訪問診療の検討

⇒事前に大雨、洪水、高潮、波浪注意報の情報を察知し、当日の訪問診療に影響      が出る可能性がある場合は前もっての訪問診療も検討する。

・道路の規制、訪問診療先の状況によっては一部訪問診療中止を検討する。→院長判断

大雨、洪水、高潮、波浪警報(重大な交通の麻痺、冠水等が発生するおそれ)

大雨による重大な土砂災害や浸水害及び洪水災害の発生、台風や低気圧等による異常な潮位上昇、高潮による遭難や沿岸施設の被害等の重大な災害が発生するおそれを予想した時に発表される。

※特に、大雨警報は警戒すべき事項を標題に明示して、「大雨警報(土砂災害)」、大  雨警報(浸水害)」、「大雨警報(土砂災害、浸水害)」のように発表される。

(行動指針)

大雨、洪水、高潮、波浪警報のレベルでは、クリニックの診療業務に大きな影響が出る可能性が高くなる。特に高速道路の速度規制、通行止め、公共交通機関の運転見合わせ、訪問診療先の浸水被害等が発生する可能性もある。こちらも地震と違って前もって備えや対策ができるので、下記の行動を実施する。

・基本行動は大雨、洪水、高潮、波浪注意報と同じ

・診療材料・医薬品の備蓄

⇒大雨の被害によっては、診療材料、医薬品の供給に支障が出る可能性があるので薬局とも連携して計画する。

・浸水、洪水への備え

⇒大雨に付随して、浸水、河川の氾濫による洪水の可能性もあるので備品、機器等高い位置に移動できるものは移動して少しでも被害を最小にする。

・警報に注意を払う。

・警報発令中に、訪問診療を実施する場合は、状況を見て院長が判断する。その場合は患者のトリアージも検討し、前もって訪問診療に必要な備品を備え、訪問経路を確認して直行直帰とするなどの対策も必要になる。また、オンライン診療も検討する。

・警報発令により状況によっては院長が出勤できない可能性もあるので、代診DRの手配、もしくは提携医療機関に訪問診療をお願いすることも想定する。

・警報解除後は職員・患者の安否確認、クリニックの被害状況(浸水等)の確認を実施する。また、職員、患者に被害が発生していた場合は支援を検討する。

DRの訪問が無理な場合、看護師のみ訪問もしくは医薬品のみ届ける。(可能な場合)

・患者宅が訪問診療可能で、クリニックが訪問診療不可能な場合は、診療業務を中止して、提携医療機関もしくは行政との連携により、訪問診療可能な医療機関に代診をお願いし、それも不可能であれば、訪問診療の延期を患者に伝え、クリニックの機能復旧に注力する。→院長判断

・避難所設置の情報収集・確認

⇒避難所の設置情報を確認した時には職員で共有するとともに、患者への案内も検討する。

③大雨、高潮、波浪特別警報(数十年に1度の強度)

台風や集中豪雨により数十年に一度の降雨量となる大雨、高波、高潮になり、数十年に一度の重大な災害が発生するおそれを予想した時に発表される。

※特に、大雨特別は警戒すべき事項を標題に明示して、「大雨特別警報(土砂災)」、「大雨特別警報(浸水害)」、「大雨特別警報(土砂災害、浸水害)」のように発表される。

(行動指針)

大雨、高潮、波浪特別警報のレベルでは、クリニックの診療業務に重大な影響が出る可能性が非常に高くなる。特にクリニックは海に近いため、訪問診療は中止して職員、患者の安全確保に努める必要があるため、下記の行動を実施する。

・基本行動は、大雨、洪水、高潮、波浪注意報、警報と同じ。

・特別警報にも注意を払う。

・職員や患者の安否確認の際に、電話、通信が繋がらない場合は、災害伝言ダイヤル、災害伝言板が提供された場合はこれらを活用する。

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